石灯籠の種類

石灯籠は、基本となる構成要素をすべて備えた基本形と、火袋意外の部分が必ずしもそろっていない変形型、庭に合わせて作られた創作型に大別されます。
なお、現在使われている灯籠は、ほとんどが「写し」と呼ばれる模刻であり、そのオリジナルになっているものを「本歌」といいます。

基本形の灯籠

真上から見た笠のかたちから三角形、四角形、六角形、八角形、および丸型に分類されます。灯籠の名称としては、献燈された寺社(本歌)の名を、形式名将として用いているものがほとんどです。

三角形

特殊な形で、清水寺成就院庭園(きよみずでらじょうじゅいんていえん)(京都府)を本歌とするもの以外は、ほとんど実例はありません。

四角形

神社などに多く見られるもので、竿の部分も四角柱となっています。お間(あい)型、西ノ屋(にしのや)型、神前(しんぜん)型、勧修寺(かじゅうじ)型などがあげられます。

六角形

最も一般的な型で、著名な春日型はこの六角形です。ほかに平等院(びょうどういん)型、般若寺(はんにゃじ)型、太秦(うずまさ)型、白太夫(しらだゆう)型、高桐院(こうとういん)型、橘寺(たちばなでら)型など、数多くの実例があります。

八角形

歴史的に最も古い型で、当麻(たいま)寺(奈良県北葛城群)の八角形灯籠(当麻寺型・本歌)は奈良時代のものとされ、現存する石灯籠のなかでは最古のものとみられています。そのほかには柚ノ木(ゆのき)型が代表的です。

円形型

江戸時代以降に出現したものと考えられますが、火袋、基礎は四角、あるいは六角のものもあります。例として、八幡(はちまん)型、玉峰院(ぎょくほういん)型などがあげられます。

創作型の灯籠

基本型の灯籠は、もともと寺社に献燈されたものがほとんどですが、創作型のものは灯籠が庭の中に置かれるようになってから創作されたものと考えられます。種類としては、生込み型、雪見型(脚付型)、置き型、寄せ灯籠、山灯籠、変形型などがあげられます。基本型に比べておおむね小型であり、現代の住宅の小庭園などにはこの型が多く用いられています。

生込み型

基礎(台石)がなく、竿を直接地面に埋め込む型です。織部型灯籠(別名:切支丹(きりしたん)灯籠)はその代表的なものです。そのほか、水螢(みずぼたる)型、萬殊院(まんじゅいん)型、朝鮮型などがあげられます。

雪見型(脚付型)

竿、基礎(台石)がなく、その代わりに脚が付いているものです。四脚が最も一般的ですが、三脚のものも多く見られます。池や流れの縁などに置かれることが多く、著名な兼六園(金沢市)の徽軫(ことじ)(琴柱)型灯籠(二脚)はこのタイプに属します。

石灯籠 ・石塔のデザイン

石灯籠・石塔は、庭に雅びやかな風情を添え、景趣を深めます。石灯籠はもともと神仏への献燈を目的として、仏教の伝来とともに朝鮮半島より日本へ伝えられたもので、庭に据えられるようになったのは桃山時代の露地(茶庭)の様式の確立によってでした。

ここでは本来の献燈という宗教目的から離れて、晩夜の茶事の際の明かりを用とするものでした。のちに、その決して華やかすぎない灯火の風情に、また灯籠自体の幽玄なかたちに惹かれ、石灯籠は露地ばかりでなく、その他の形式の庭にも置かれるようになりました。

同様に層塔(そうとう)、宝篋印塔(ほうきょういんとう)、無縫塔(むほうとう)などの石塔類も石造美術として庭に取り入れられました。このような歴史を経て和風庭園に置かれるようになった石灯籠、また、石塔類の基礎をここではご紹介します。

石灯籠の構成

石灯籠は基本形として上部より以下の七部品から構成されます。

  1. 宝珠(ほうじゅ)
  2. 笠(かさ)
  3. 火袋(ひぶくろ)
  4. 中台(ちゅうだい)
  5. 竿(さお)
  6. 基礎(台石)(きそ(だいいし))
  7. 基壇(きだん)
石灯籠の各部名称(春日型灯籠)

宝珠(ほうじゅ)

石灯籠の頂上にのる葱花(そうか)状の部分をいいます。宝珠だけの物と「請花(うけばな)」(蓮弁)をともなったものがあります。

笠(かさ)

石灯籠の屋根にあたる部分。軒先に当たる部分に上巻きの「蕨手(わらびて」をつけることもあります。

火袋(ひぶくろ)

灯火を入れるところで、石灯籠のなかでもっとも重要な部分です。開口部は「火口(ひぐち)」と称します。

中台(ちゅうだい)

火袋を支える部分で、下部の基礎台石と対照的に構成されます。

竿(さお)

石灯籠全体を支える柱。竿は、円柱、角柱の二種類に分けられ、一般的に上中下三箇所に「竹節(たけふし)」「二重帯(にじゅうおび)」「珠紋帯(しゅもんおび)」などの節がついています。

基礎(台石) (きそ(だいいし))

竿を受ける台石で、地輪とも呼ばれます。上部に「反花(かえりばな)」、側面に「格狭間(こうざま)」と呼ばれる彫り物がついているものが多く見られます。織部(おりべ)型灯籠など、生込(いけこ)み型と称し、竿を直接地面に埋め込む形式のものには基礎はありません。

基壇(きだん)

基礎を支える物で、方形あるいは円形の石を用います。基礎同様、生込み型の灯籠にはありません。